耐震改修について(大阪市大モデルの場合)
①床組
伝統構法による長屋にはコンクリートによる基礎がなく、柱が石の上に建っている礎石建ちと言われる形式となっている。そのため、1階の床を施工することで水平構面の剛性を確保する必要がある。
②耐震要素の壁の新設
長屋の平面は奥行き方向に長く、隣の住戸と壁を共有している。そのため、奥行き方向の壁の量は界壁として充分にあるが、間口方向の壁が足りていない場合がほとんどである。その貴重な壁もライフスタイルへの適応を目的に撤去されてしまっている場合が見られる。そこで、耐震補強設計に基づいて間口方向に新たに壁を設置する。その際には、伝統構法に適した特性を持った壁とするために、荒壁パネルという土壁に似た性能を持ったパネルを用いて壁を施工している。
③火打梁や際根太による補強
耐震補強に際しては、耐震要素となる壁を新設するだけではなく、その壁に適切に力を伝えるために、補強部材を足すことも重要である。
④小屋裏の補強:頭つなぎと筋交い
2階に上がり、小屋裏を見ると、押し入れや床の間の壁を構成する奥行き方向の土壁や小壁の上には梁がなく、回り縁のみとなっている場合が多い。このままでは、せっかくある柱が構造として機能しない。そこで、頭つなぎと呼ばれる梁と回り縁を連結させ、屋根の水平構面と柱や梁による軸組を一体化させる。
⑤土壁の補修
土壁を耐震要素として効かすために、柱と梁に囲まれた土壁を丁寧に補修することが重要である。