オープンナガヤスクール(2016年度分)

2011年度から始まった、オープンナガヤ大阪も2016年度で6回目の開催となりました。本年度は、これまでに構築、成熟してきたネットワークを活用し、「生き生きとした長屋情報」を適切に長屋入居希望者などへ提供するために、より濃密にリアルな長屋暮らしを体感することができる「オープンナガヤスクール」を定期的に開催しました。スクールではDIYワークショップや見学会、トークショーや相談会などを少人数の予約制で行い、参加者のより具体的な長屋に対する興味、悩み、相談に対応できるイベントを目指しました。この企画から、新たな暮らしを始める人々が現れることを期待しています。

第1回 長屋でDIY 亜麻仁オイル塗装@山之内元町長屋

2016年4月に耐震改修工事が竣工した大阪市住吉区の山之内元町長屋で、内装材のラワン合板に、自然素材である亜麻仁オイルを塗装するDIYワークショップを行いました。今回のスクールでは、耐震改修された賃貸の長屋での暮らしを想像してもらうことが目的でした。また、実際に内装材に自ら塗装することにより、住宅に手を加えながら住まうという暮らし方を体験してもらうという目的もありました。  大阪市立大学教員の小池氏に講師を依頼し、参加者に山之内元町長屋の改修の内容や周辺地域の歴史などをお話ししてもらいました。ワークショップは塗装の基本となる養生作業から行い、参加者全員で丁寧に亜麻仁オイルを塗装していきました。同じラワン合板でもその状態によって少しずつ黄色や赤のような違った仕上がりとなり、参加者からは驚きの声があがっていました。

第2回 空き家ナガヤめぐりツアー@生野区

当時改修計画中の2軒の長屋と改修済みの長屋2軒、そのままの空き家の長屋2軒の計6軒を建築士、長屋所有者、不動産専門家の解説付きで見学ツアーを行いました。状態の異なる空き家と異なる考え方の2軒の改修済みの長屋を様々な専門家の解説で見学することにより、参加者が空き家長屋の活用に関して多様な観点からの知識を得られることを期待した企画でした。  当日は全5回のスクールで最多となる26名の参加がありました。実際に住む長屋を探している人や、仕事や研究の参考にしたい人、所有する長屋の改修の参考にしたい人など、実に多様な目的を持った参加者が集まりました。  参加者の約8割が改修済みの長屋の見学が参考になったと回答し、また約7割が長屋所有者の話が参考になったと回答しました。  実際にリノベーションされた長屋を、その所有者の解説で見学することに大きな意味があったようです。

第3回 リノベーショントークショー@ヨシナガヤ

平野区の平屋の長屋を賃貸し、自身が建築士でもある住人の吉永氏の設計と施工によってリノベーションされた長屋で、建築士として、そして住人としての長屋のリノベーションについてのトークショーを行いました。    物件との出会いから、改修そして居住の経験と、参加者が多角的に長屋暮らしについての知識が得られることを期待して企画しました。また吉永氏による改修がなされた飲食店、「パンとお話 Appleの発音」の見学をスクール終了後に行いました。  当日は21名の参加となり、全5回の中で40歳代までの若年層の割合が最も高いスクールとなりました。実際に暮らしている感想や、建築士としてのリノベーションなどの工夫などのお話しをしていただき、参加者は実物を見ながらお話しを聞くことができるので、よりリアルに長屋のリノベーションを実感することができたのではないかと思います。また、終了後にはとても熱心に長屋の改修について相談される方もいらっしゃいました。

第4回 リノベーション計画中ナガヤ見学会@須栄広長屋

解体工事まで終了した、改修計画中の3軒の長屋の見学を設計担当の大阪市立大学大学院の学生2名と教員の小池氏、そして須栄広長屋所有者の解説で行いました。図面、模型、現場を交えた説明を行い、完成後の長屋暮らしを想像できるように企画しました。また、須栄広長屋1期の改修済みの長屋の一部を同時に見学しました。  第2回と同じ会場での開催となりましたが、前回の見学会ではなかった、暮らしをイメージする質問が参加者から上がりました。例えば、どのくらいお隣さんの音が聞こえるかや、暑さや寒さなどについての質問があり、それに対して模型や図面を使って学生が説明していきました。  またこの会場での完成見学会などを行いますか、といった質問があったように、古い長屋の改修の様子を定期的に見学できる機会を設けることで、より有益な情報の提供ができると気づかせてもらいました。  須栄広長屋2期は2017年春に竣工予定です。

第5回 リノベーショントークショー@Re:Toyosaki

建築士の松村一輝氏が、中古の長屋を購入し、自ら改修設計を行い、リノベーションした住宅の「Re:Toyosaki」において、建築家としてまた、住人として中古の長屋を購入してリノベーションすることについてのトークショーを行いました。中古物件を購入した会場として、第3回のヨシナガヤでのトークショーとはまた違った特徴の解説などによって、参加者が新たな知識を得ることを期待して企画しました。  今回はオープンナガヤ大阪開催の直前でもあり、会場に向かう途中で中崎町エリアと豊崎長屋群の紹介を行いました。会場では、講師が用意した改修前後がわかる図面を配布し、それをもとに見学会とトークショーを行いました。トークの内容では中古物件を購入する際の見るべきポイントなどをプロの目線で話していただき、また設計に関しても耐震や断熱性能などの工夫をわかりやすく説明してもらいました。